はじめに
青森県は、日本有数のマグロ産地として知られています。なかでも大間のマグロは「まぐろの王様」として世界的に知られ、築地市場(現・豊洲市場)の初競りでは、過去には1匹1億円を超える高値がつくこともありました。しかし、青森のマグロの魅力は大間だけにとどまりません。津軽海峡、日本海、太平洋という三方を海に囲まれた青森県では、各地域でさまざまな特色を持つマグロが水揚げされています。
この記事では、青森県内のマグロの産地、種類、季節による違い、そして最高の味わい方までを解説します。「本当の青森マグロ」を知るためのガイドです。

青森マグロの基礎知識
青森県で獲れるマグロの種類
青森県の海域では主に以下のマグロが漁獲されています:
- クロマグロ(本マグロ): 大間をはじめとする津軽海峡で主に漁獲される高級マグロ。脂のノリと濃厚な旨味が特徴。
- ビンナガマグロ(ビンチョウ): 青森県沖を含む三陸沖などの太平洋側で獲れる。淡白でさっぱりとした味わい。
- メバチマグロ(目鉢): 主に八戸沖など近海ものに加え、遠洋漁業で漁獲されたものも多く水揚げされます。クロマグロに似た風味だが、よりリーズナブル。
- キハダマグロ(黄肌): 夏から秋にかけて漁獲量が増加。名前の通り、身が黄色みを帯びている。
青森マグロ漁の特徴
青森県のマグロ漁は、主に「一本釣り」という伝統的な漁法で行われます。特に大間のマグロ漁師たちは、「大間追っかけ釣り」と呼ばれる独特の漁法を守り続けています。この漁法では、1人の漁師が1隻の小さな漁船で、一匹一匹丁寧にマグロを釣り上げます。こうして獲られたマグロは、傷みが少なく、最高の状態で市場に出荷されるのです。
一方、八戸など太平洋側では、まき網漁や延縄漁も行われており、それぞれの漁法による味の違いも楽しめます。
青森県内のマグロ名産地巡り
大間 – マグロの聖地
なぜ大間のマグロは特別なのか
大間のマグロが特別視される理由はいくつかあります:
- 津軽海峡の激しい潮流で鍛えられた引き締まった身質
- 寒冷な海域で育つことによる上質な脂のノリ
- 一本釣りによる丁寧な漁獲と血抜き処理
- 津軽海峡に回遊してくるマグロの中から、経験に基づき良い漁場やタイミングを見極め、良質な個体を釣り上げる漁師の技術と経験

大間で本物のマグロを食べるスポット
- 大間崎レストハウス・大間観光土産センター (旧大間新鮮市場エリア)
- 住所:青森県下北郡大間町大間字大間平17-1(周辺エリア)
- 営業時間:例年 8:00頃〜17:00頃(店舗・季節により変動あり)
- 特徴:大間崎周辺には複数の食事処や土産店があり、大間産本マグロを味わえます。※店舗ごとに営業時間・定休日が異なります。事前にご確認ください。
- 浜寿司 (旧まるた)
- 住所:青森県下北郡大間町大間字奥戸17
- 営業時間:11:00〜14:00頃(売切れ次第終了の場合あり、要確認)
- 特徴:漁師が営む寿司店。新鮮な大間マグロを提供。※不定休・予約推奨の場合があるため、事前にご確認ください。
※上記店舗情報は変更される場合があります。訪問前に必ず公式サイトや電話等で最新情報をご確認ください。
大間マグロ祭り
例年10月頃に開催されてきた「大間マグロ祭り」は、マグロ好きなら見逃せないイベントです。大間産本マグロの解体ショーや即売会、マグロ料理の提供など、大間のマグロを存分に楽しめます。※最新の開催情報は大間町の公式サイト等でご確認ください。
八戸 – マグロの水揚げ量日本有数の港町
八戸港のマグロ事情
八戸港は、マグロ類(クロマグロ、メバチ、ビンナガなどを含む)の年間水揚げ量が全国トップクラスを誇る重要な漁港です。特に遠洋マグロ漁船の基地として知られ、大西洋や太平洋で漁獲された様々な種類のマグロが水揚げされます。(出典:水産庁 漁業・養殖業生産統計年報など)
八戸で味わうマグロスポット
- 八食センター
- 住所:青森県八戸市河原木神才22-2
- 営業時間:市場棟 9:00〜18:00、味横丁 9:00〜18:30(店舗により異なる場合あり)
- 特徴:巨大な市場施設。「厨スタジアム」や「味横丁」内の寿司店や飲食店で、新鮮なマグロを含む海鮮が味わえます。※定休日(主に水曜)や営業時間は事前にご確認ください。
- みなと食堂
- 住所:青森県八戸市湊町久保45-1
- 営業時間:6:00〜14:00
- 特徴:漁港近くの人気店。マグロを含む新鮮な海鮮丼が有名(特にヒラメ漬丼)。※定休日(主に日曜)や営業時間は事前にご確認ください。
- 館鼻岸壁朝市(日曜限定)
- 場所:青森県八戸市新湊3丁目 館鼻岸壁
- 開催時間:例年 3月中旬〜12月の毎週日曜 日の出〜9:00頃
- 特徴:日本最大級とも言われる巨大朝市。マグロのカマや切り落としなどをリーズナブルに購入できることも。※開催状況は事前にご確認ください。
※上記店舗・イベント情報は変更される場合があります。訪問前に必ず公式サイトや電話等で最新情報をご確認ください。
深浦・鰺ヶ沢 – 日本海側のマグロの宝庫
日本海側の深浦町や鰺ヶ沢町も、優れたマグロの産地として知られています。冬から春にかけては、クロマグロの若魚である「メジマグロ」が多く漁獲されるのが特徴です。
おすすめスポット
- 黄金崎不老ふ死温泉 食事処 や 深浦町内の食事処
- 住所:青森県西津軽郡深浦町(各所)
- 営業時間:店舗により異なる
- 特徴:深浦町では「深浦マグロステーキ丼」がご当地グルメとして提供されています。町内の複数の店舗で味わえます。(旧くろまぐろ亭は閉店等の情報あり、代替情報として記載)
- 鰺ヶ沢駅前 海の駅わんど や 町内の朝市
- 場所:青森県西津軽郡鰺ヶ沢町(各所)
- 開催時間:朝市は例年 4月〜11月頃の日曜・祝日 朝(要確認)
- 特徴:「海の駅わんど」では地元の海産物が入手可能。朝市では日本海で獲れたマグロを含む鮮魚が並ぶこともあります。
※上記情報は変更される場合があります。訪問前に必ず公式サイトや電話等で最新情報をご確認ください。
季節ごとの青森マグロ食べ比べガイド
青森のマグロは季節によって味わいが大きく変わります。ベストシーズンを知って、最高の一尾に出会いましょう。

春(3月〜5月)
主な漁獲:メジマグロ(クロマグロの若魚)、ビンナガマグロ 特徴:冬を越したメジマグロは脂が程よくのり、さっぱりとした味わいが特徴。初心者にもおすすめの食べやすさです。 おすすめの食べ方:刺身、漬け丼
夏(6月〜8月)
主な漁獲:キハダマグロ、メバチマグロ 特徴:キハダマグロは夏が旬。さっぱりとした味わいで、暑い季節に適しています。 おすすめの食べ方:たたき、サラダ、カルパッチョ
秋(9月〜11月)
主な漁獲:大間のクロマグロ(最盛期) 特徴:いよいよ大間のクロマグロの最盛期を迎えます。9月下旬から11月にかけてが、最も脂がのって美味しい時期と言われます。 おすすめの食べ方:刺身(大トロ、中トロ、赤身)、握り寿司
冬(12月〜2月)
主な漁獲:クロマグロ(寒マグロ)、メバチマグロ 特徴:「寒マグロ」と呼ばれる冬のクロマグロは、脂が凝縮され独特の甘みが増します。 おすすめの食べ方:刺身、しゃぶしゃぶ、すき焼き
マグロのプロが教える目利きのポイント
鮮度を見極める方法
- 色と艶
- 良質なマグロの赤身は鮮やかな紅色で、表面に艶があります。
- 褐色や暗赤色に変色しているものは鮮度が落ちている可能性があります。
- 弾力
- 指で軽く押して、すぐに戻るような弾力があるものが新鮮です。
- 押したときにへこんだままのものは避けましょう。
- 断面のきめ
- きめが細かく、筋が目立たないものが上質です。
- 「スジ」が多いものは、部位によっては食感が硬いことがあります。(※「水結び」は別の魚の品質に関する用語のため修正)
- 香り
- 新鮮なマグロは、生臭さのない、海の香りがします。
- アンモニア臭や強い魚臭さがするものは避けるべきです。
部位ごとの特徴と楽しみ方
- 大トロ(おおとろ)
- 腹部の最も脂が多い部位。とろけるような食感と甘みが特徴。
- 握り寿司や刺身で、シンプルに味わうのがベスト。
- 中トロ(ちゅうとろ)
- 大トロと赤身の中間にある部位。程よい脂と旨味のバランスが絶妙。
- 刺身や寿司で人気が高い部位。
- 赤身(あかみ)
- 背側や身の中心部分。脂は少ないが、マグロ本来の旨味が強い。
- 醤油とわさびで味わう王道スタイルか、漬けにするのも◎。
- カマ(かま)
- エラの後ろ、胸びれの付け根あたり。骨の周りの身で旨味が強い。
- 塩焼きや煮付けにすると絶品。
- ほほ肉
- 頬の部分の希少部位。加熱するとステーキのような食感になることも。
- 刺身や塩焼き、ステーキ、煮付けなどで味わいましょう。

青森マグロを100%楽しむための調理法・レシピ
基本の刺身の切り方
- 柵(サク)は切る直前までチルド室などで低温保管します。
- 筋目に対して垂直に、包丁の刃元から刃先まで長く使い、引くように切ります。
- 赤身は8〜10mm、トロは少し厚めの10〜15mm程度の厚さが目安です。
- 切ったらすぐに盛り付け、乾燥を防ぎましょう。
おすすめ!青森マグロのご当地風レシピ
大間風 本マグロの漬け丼
- 材料(2人前):本マグロの赤身200g、醤油 大さじ3、みりん 大さじ2、酒 大さじ1、わさび 少々、温かいご飯 2膳分、刻み海苔・大葉など お好みで
- 作り方:
- 醤油、みりん、酒を混ぜ合わせ、軽く煮切るか電子レンジで加熱してアルコールを飛ばし、冷ましておく。
- マグロを1cm厚さ程度のそぎ切りにし、漬け汁に10〜15分ほど浸す。
- 温かいご飯の上にマグロを並べ、漬け汁を少量かけ、わさびや刻み海苔、大葉などを添える。
八戸風 マグロのネギトロ丼
- 材料(2人前):メバチマグロやビンナガマグロのサク 200g、長ネギ 1/3本、醤油 適量、わさび 少々、温かいご飯 2膳分
- 作り方:
- マグロのサクを包丁で細かくたたく(またはフードプロセッサーで粗みじんにする)。
- 長ネギをみじん切りにする。
- ボウルにたたいたマグロ、ネギ、醤油、わさびを入れて混ぜ合わせる。
- 温かいご飯の上にのせて完成。
津軽風 マグロのしゃぶしゃぶ
- 材料(2人前):本マグロの赤身または中トロのサク 300g、昆布 10cm角、水 1L、ポン酢 適量、薬味(刻みネギ、もみじおろし、大葉など)
- 作り方:
- マグロを2〜3mm厚さの薄切りにする(半解凍状態だと切りやすい)。
- 鍋に水と昆布を入れて火にかけ、沸騰直前に昆布を取り出す。
- マグロを昆布だしにさっとくぐらせる(表面の色が変わる程度、数秒)。
- ポン酢と好みの薬味で味わう。
知って得する!マグロ通になるための豆知識
マグロの栄養価
マグロは、良質なタンパク質が豊富で、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)といったオメガ3系不飽和脂肪酸を多く含む優れた食材です。特に赤身には、鉄分やビタミンB12も豊富に含まれています。
マグロの持続可能性
特にクロマグロは資源管理が重要な魚種です。国際的な資源管理ルールに基づき、青森県の漁師たちも国や県の指導のもと、漁獲可能量(TAC)の遵守、漁期・サイズの制限、小型魚の保護(リリース)など、資源管理と持続可能な漁業に取り組んでいます。特に大間などで行われる一本釣りは、狙った魚だけを獲る選択性が高く、混獲が少ない漁法とされています。(出典:水産庁、青森県庁など)
知っておきたいマグロ用語集
- 血合い(ちあい):マグロの身の暗赤色の部分。鉄分が豊富。独特の風味があり、加熱調理(煮付け、唐揚げなど)に向く。
- スクレイプ:ネギトロなどに使う、骨の周りなどから削ぎ取ったマグロの身(すき身)。
- 目利き:マグロなどの魚介類の品質や価値を見極めること、またはその専門家。市場での取引や仕入れにおいて重要な役割を果たす。
- トンボ:ビンナガマグロの別名。胸びれが長いことに由来する。
まとめ:青森マグロを極める旅
青森県のマグロは、単なる食材ではなく、地域の文化や伝統、そして漁師たちの誇りが詰まった宝です。大間の本マグロを筆頭に、八戸に水揚げされる様々なマグロ、日本海側のメジマグロなど、各地域や季節によって異なる特色を持つマグロがあります。
季節やマグロの種類、部位によって異なる味わいを知り、それぞれに合った調理法で味わうことで、青森マグロの真の魅力を発見できるでしょう。
この記事が、あなたの「青森マグロ」への理解を深め、より豊かなマグロ体験への道しるべとなれば幸いです。青森の海の恵みを存分に楽しむマグロの旅に、ぜひ出かけてみてください。