青森の冬といえば、雪深い津軽平野を走る「津軽鉄道ストーブ列車」を思い浮かべる方も多いでしょう。車内に本物のダルマストーブが設置され、青森の冬の風物詩として全国から多くの観光客が訪れます。真っ白な雪景色の中をゆっくりと進む列車の中で、パチパチと石炭が燃える音を聞きながら過ごす時間は、まさに非日常の贅沢そのもの。今回は、実際にストーブ列車に乗車した体験をもとに、その魅力と楽しみ方を詳しくご紹介します。
津軽鉄道ストーブ列車とは
津軽鉄道は、青森県五所川原市の津軽五所川原駅から中泊町の津軽中里駅までの20.7kmを結ぶローカル鉄道です。この路線で冬期間(12月1日~3月31日)に運行されるのが、名物の「ストーブ列車」。昭和5年11月に全線開業し、その年の12月から運行が始まった伝統ある列車で、車内に設置されたダルマストーブで暖を取りながら旅を楽しめる、世界でも珍しい列車として知られています。
ストーブ列車の魅力は、なんといっても車内の温かな雰囲気です。石炭を燃料とするダルマストーブの周りには、地元の方々が車内販売でスルメを販売する「津軽のおもてなし」があり、乗客同士の自然な交流も生まれます。車窓からは津軽平野の雪景色が広がり、まるで絵画のような美しさに心を奪われることでしょう。
運行情報と料金
【2024-2025年シーズン最新情報】
ストーブ列車は12月1日から3月31日まで運行されます。ただし、12月は運行日に注意が必要です。
運行本数:
- 12月1日と12月の平日:2往復
- 12月の土日:3往復
- 12月30日~3月31日:毎日3往復
運行時刻(2024-2025年シーズン):
- 津軽五所川原駅発:9:35、12:00、14:40
- 津軽中里駅発:10:53、13:37、15:54
所要時間は片道約45分で、のんびりとした津軽の田園風景を楽しむには十分な時間が確保されています。
料金(2024年12月1日改定): ストーブ列車に乗車するには、通常の乗車券に加えて「ストーブ列車券」が必要です。
- ストーブ列車券:1,000円
- 乗車券(例:津軽五所川原駅~津軽中里駅):870円
津軽五所川原駅から津軽中里駅まで乗車する場合、合計で1,870円となります。
※ストーブ列車券は2024年12月1日から料金改定されていますので、ご注意ください。 ※事前予約は不要ですが、土日祝日や年末年始は混雑するため、平日の利用がおすすめです。
実際の乗車体験
津軽五所川原駅に到着すると、まず目に飛び込んでくるのは昭和レトロな駅舎の佇まいです。駅構内には津軽鉄道の歴史を紹介する展示コーナーもあり、乗車前に津軽鉄道の魅力を予習できます。ホームに入線してくるストーブ列車は、外観からして特別感があります。車体に描かれた雪だるまのイラストが可愛らしく、写真撮影スポットとしても人気です。
車内に足を踏み入れると、まず感じるのは石炭の香りと温かさです。中央に鎮座するダルマストーブの周りには木製のベンチが配置され、昭和の香り漂う車内はまるでタイムスリップしたかのような雰囲気。ストーブの上では、車内販売で購入したスルメがじっくりと焼かれており、その香ばしい匂いが食欲をそそります。
列車が動き出すと、車窓には津軽平野の雪景色が広がります。特に美しいのは金木駅から津軽中里駅にかけての区間で、岩木山を背景にした田園風景は絶景そのもの。雪に覆われた田んぼや民家、遠くに見える山々が織りなす風景は、都市部では決して味わえない贅沢な時間を提供してくれます。
車内での楽しみ方
ストーブ列車の魅力は移動手段としてだけでなく、車内での体験にもあります。まず試していただきたいのが、ストーブで焼くスルメです。車内販売で購入でき、ストーブの上で焼いて食べる体験は他では味わえない特別なもの。パリパリとした食感と濃厚な旨味は、津軽の冬の味として記憶に残ることでしょう。
また、車内では地元の方との交流も楽しみの一つです。津軽弁で話しかけてくるアテンダントさんとの会話は、方言が分からなくても温かい人柄が伝わってきます。津軽の文化や歴史について教えてもらったり、おすすめの観光スポットを聞いたりと、ガイドブックにはない生の情報を得られるのも魅力です。
写真撮影も忘れてはいけません。車内のレトロな雰囲気、ストーブの炎、雪景色など、被写体に事欠かない環境が整っています。特におすすめなのは、ストーブの炎と車窓の雪景色を一緒に撮影すること。津軽鉄道ならではの特別な一枚が撮影できるはずです。
沿線の見どころ
ストーブ列車の旅をより充実させるためには、沿線の観光スポットも押さえておきたいところです。
太宰治記念館「斜陽館」(金木駅) 金木駅から徒歩約7分の場所にある、太宰治の生家を利用した記念館です。明治40年に建てられた豪邸は国の重要文化財に指定されており、津軽の文豪の足跡を辿ることができます。
※営業時間、休館日、入館料などの最新情報は、訪問前に必ず公式サイト等でご確認ください。
中泊メバル膳 終点の津軽中里駅周辺では、中泊町の特産品である津軽海峡メバルを使った「中泊メバル膳」を味わえます。中泊町内の複数の飲食店で提供されており、特に冬の時期は、津軽海峡で獲れる新鮮な魚介類が堪能できます。
芦野公園駅「赤い屋根の喫茶店 駅舎」 芦野公園駅も見逃せないスポットです。春には桜の名所として知られていますが、冬は雪化粧した公園の美しさを楽しめます。また、津軽鉄道開業時の旧駅舎を利用した喫茶店「駅舎」があり、温かいコーヒーを飲みながら列車の待ち時間を過ごすことができます。この建物は国の登録有形文化財にも指定されています。
- 営業時間:10:00~17:00(L.O. 16:30)
- 休業日:水曜日
- ※訪問前に最新情報をご確認ください。
旅のコツとアドバイス
ストーブ列車を最大限楽しむためのコツをいくつかご紹介します。
服装について 防寒対策をしっかりと行いつつ、車内では脱ぎ着しやすい重ね着がおすすめです。ストーブの近くは非常に暖かいため、調整できる服装を心がけましょう。
座席について ストーブに近い席は暖かい反面、煙の匂いが気になる場合もあります。匂いに敏感な方は、少し離れた席を選ぶか、窓際の席で景色を楽しむのも良いでしょう。また、混雑時は立ち乗りになることもあるため、平日の利用がおすすめです。
写真撮影について 車内は薄暗いため、自然光を活かした撮影を心がけると、雰囲気のある写真が撮れます。また、他の乗客への配慮も忘れずに行いましょう。
運行状況の確認 ストーブ列車は冬期限定の運行のため、必ず事前に運行状況を確認してください。大雪などの悪天候時は運休になる場合もあります。
お問い合わせ先: 津軽鉄道株式会社 電話:0173-34-2148(代表) 公式サイト:https://tsutetsu.com/
まとめ
津軽鉄道ストーブ列車は、青森の冬を代表する観光体験の一つです。雪景色の中をゆっくりと進む列車の中で、ストーブの温もりを感じながら過ごす時間は、きっと忘れられない思い出となることでしょう。地元の人々との交流、津軽の美しい自然、そして昭和レトロな雰囲気が織りなす特別な体験を、ぜひ多くの方に味わっていただきたいと思います。
2024-2025年シーズンはストーブ列車券の料金改定が行われていますので、訪問前に必ず最新情報をご確認ください。青森旅行を計画される際は、ストーブ列車の旅をぜひ検討してみてください。

